"あいつは世界を肯定した。そうすることができた。
誰も裏切ることはなく、雨水のように消えていった。
――そしてあたしは取り残される。"
杏子はさやかを止めた。止めようとした。
「それが過ちだったと、後になって気づいたとしても――」
魔法少女は取り消せない。
さやかは願いを叶え、そして早々と消えてしまう。
まるですべてを了解していたように。
瘴気の強い夜、桃色の雨が降る――魔法少女だけが見る幻影。
杏子は街をさまよっていた。
独りで魔獣を探す中、彼女が見つけたのは少女の死体だった。
魔獣の仕業でないと知りその場を離れようとする杏子に迫る凶刃。
願いを叶えるのに失敗した魔法少女は何故戦う?
この世界に神様はいるのか?
神様はほんとうに誰かを幸せにできるのか?
一つの世界を否定した願いを、さらに否定する呪いと祈り。
世界をもう一度変えてしまうに足りる絶望。
それは足音さえ立てずに遠くからやってくる。
杏子は見滝原に隠された、美樹さやかの真実を探す。
上条恭介、志筑仁美。さやかが祈り、残してきた人たち。
そこには秘められた約束があって、杏子はやがてそれを知る。
"世界と魔法はこんなにも約束で満ち足りていた。
――それは不思議で、そして素晴らしい。"